インフルエンザなどすっかり忘れて、フィンランド(ヘルシンキ)、スウェーデン(ストックホルム)、デンマーク(コペンハーゲン)を歩き回りました。3カ国(3都市)について3回にわたって報告します。

ヘルシンキ大聖堂にて
まず訪問先です。フィンランドでは、「Feminist Association Union」(NPO)と通訳もして頂いたパルムネン博子さんから(在住25年)「フィンランド女性事情」を聞きました。ヘルシンキからストックホルムへは9階建ての船(ちょっと変ですが)で一泊してストックホルムへ。ストックホルムからコペンハーゲンへは列車で白樺と葉の花畑が続く車窓を5時間かかって到着しました。
スウェーデンではジャーナリストのレベッカさん(Rebecka Edgren Alden)をMーマガジン社に訪問し、フェミニズムの第2世代の心意気を伺いました。「50歳からこそ女性の人生!、次の選挙にはFeminist Initiative党に頑張って欲しい」(社会労働党は大気や役割を果たしたけれど)などなど。その後は、グラフィックデザイナー、イーダ&ヨナさん夫妻をお家に訪ねました。パパのヨナさんが迎えに行った保育園児のシェーラちゃんにマックス君も加えてキャリアと家事・育児の話になりました。
デンマークでは、「Women’s council in Denmark」を訪問。ランディさん(Ms,Randi Theil Nielsen)に1970年代から21世紀、そして今後の女性の雇用問題や社会保障のお話を聞きました。午後はコペンハーゲン大学に人類学部長レフシングさん(Kirsten Refsing)を訪問。日本通の彼女からは、日本女性の今後の期待も含めてお話を伺いました。
スウェーデン:フェミニズム第3世代? シェーラちゃん
スウェーデンはやはり気になる国です。世界中の人々が格好のモデルないしは目標とする国だからです。特に男女平等の国としての地位は揺るぎないものがあります。教育、労働、賃金、家事育児などいずれをとっても、女性に対する差別や格差が世界で最も小さい国だからです。その典型例のようなカップルをストックホルムのご自宅に訪問しました。
グラフィックデザイナーとしてガムラスタン(旧市街地)で会社経営をしているイーダ(Ida Wessel37歳)&ヨナ(Jonas Wessel)さんは、8年前に起業に踏み切ったといいます。「子ども育てながら仕事をしやすいし、収入も充分だし」と広いアパートで自分たちの好きな作品に囲まれています。パパのヨナさんが迎えに行った保育園児のシェーラちゃんにマックス君の4人家族。家事の分担ではパパは、力が強いので洗濯や食事、妻のイーダさんは家計管理を担っているということ。会社経営でもどちらかというと経営方針やクリエイティビティはイーダさんの方が得意だという。「2人でうまくやるコツはお互いにエネルギーを出し合うけれど、ハーモニーを大切にして競争しないことだ」とヨナさんはいいます。
イーダさんは、「私たち2人とも親から大きなものを受け継いでいます。美術教師をしていた母親は、1970年代のフェミニズム運動の闘士でした。母たちが職場での闘争を頑張ってくれたおかげで、私たちの世代は、職場以外の場でも平等が保たれるようになりました。私はもっと平等が進むように、「Feninist Initiative」(後述*)党の応援をしています。私は党のマークをデザインしました」と語った。フェミニスト第三世代、まだおむつスタイルシェーラちゃん、少しも邪魔をしなかったけど冷静に両親の話を聞いていたようでした。

シェーラちゃんとマックス君

ヨナ&イーダさん
スウェーデン:むしろ、「フェミニスト党*」を応援するレベッカさん(Rebecka Edgren Alden)37歳 M-マガジン社 編集部
雑誌M-マガジンは地下鉄の駅にもありました。とても売れているそうです。「50歳から女をやろう、これからこそ大事な人生だ」という意味があり、表紙を飾るのは雑誌社の創設者アメリアさんです。

左がレベッカさん、右がM-マガジンのオフィス、下は表紙がアメリアさんのM-マガジン4月号と5月号
レベッカさんは09年3月、『家族生活と男女平等』(『SKRIET』)を出版。この本を頂いたのですが、「もっと売れると英語版にもなるのに」といわれるように読めなくて残念。 3人の子どもを育てながら家庭生活からもっと「ジェンダー平等Jamstalldhet」を進めようと訴える本です。イェムステルヘート:この言葉はスウェーデン独自のもので、英語のEquaityではなく,Gender Equalityを意味するものです。
「1970年代進めてきたフェミニズムの運動によって、私たちは育てられてきました。しかし家庭の中ではまだまだです。例えば両親休暇を50%ずつ取ったとしても、夫には「よくやるわね」とほめ言葉がもらえるのに、妻の方は、「手作りのパンを焼くとか、特別のことをしなければならないのかしら」と後ろめたさを感じるのです。意識の面まで変るのはなかなか困難です。そこを変えなければと、私は思うのです」といいます。
「政治のことでいえば、もちろん長年にわたって社会労働政権はよくやってきたし、おかげでスウェーデンの男女平等は進んだと思うけれど、あえて言えば、次の選挙では、「Feminist Initiative」(フェミニスト党)を応援します。私はその運動をやっています」とのことでした。(以上。次回はデンマーク編です)
もうすぐ北欧ツアーです。とくにフィンランドははじめてなので 楽しみです。少し前、東京でフィンランド大統領タリヤ・ハロネン(2000年~)の夫氏とシンポジウムでご一緒だったこともあり、いつかきっとと心に決めていました。フィンランドをはじめ北欧5カ国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、アイスランド)は、男女平等指数では、いつも最高位です。

フィンランド・ヘルシンキ大聖堂
男女平等世界一
2008年度の国連開発計画(UNDP)発表のジェンダー・エンパワーメント指数(GEM:政治および経済活動への女性の参画を示す指数で、国会議員、管理職国会議員、管理職、専門職・技術職に占める女性の割合および男女の推定所得格差を用いて算出)の順位は、第1位がスウェーデン、続いてノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランドの第5位まで続いています。日本は、108カ国中58位です。昨年2007年は54位で例年ずり落ちていっているのが現状です。いかに日本の場合、政治経済活動や意思決定の場に女性が参加できていないかを示すものです。近年フィンランドは「世界一」が増えています。1906年ヨーロッパで最初に女性参政権を確保した国(ニュージーランド1893年)ですが、国会に女性議員を送った国としては1907年で世界で第一位です。
学力世界一
近年「フィンランドは子どもたちの学力世界一」の報道に話題が沸騰しています。 日本は今、子どもにどうして生きる力をつけるのか大人たちが迷いに迷っている 時代だからです。子どもたちに競争させるのではなく、考える力をつける教育が 学力世界一の秘訣だといわれています。フィンランドの教育の成功の裏には 「3つの秘訣」があります。
①教師のレベルが高い!原則、修士号を取得している。
②落ちこぼれを作らない! 少人数授業と補習制度
③大人も子どもも読書好き! 読み書き計算は当たり前
ということです。
1クラスあたりの生徒の数がとても少なく、日本の半分くらいの人数です。 さらに国語と数学については、勉強が遅れがちな子どもを数名のグループに 分けて、特別な補助授業を行っています。こうすることで、授業についていけ ない子をなくすのです。またフィンランドの人の読書好きは「図書館利用率が 世界一」といわれるほどで、PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2000年のでも 1日あたりの読書量はトップレベルにあります。

携帯電話の普及率が世界一
携帯電話の普及率が世界一で、大半の人はフィンランドのNOKIAを使っているそうです。NOKIAの携帯はカバーが付け替えられムーミンのカバーが人気だそうです。

コーヒー消費量世界一
フィンランドの世界一に「コーヒーの消費量」というのもあります。フィンランド 人にとってのコーヒーというのは携帯電話と同じようにコミュニケーション・ツール なのでしょう。
GDP(国内総生産)成長率が世界一
さらにフィンランドは人口一人あたりのGDP(Gross Domestic Product一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額でGDPの伸び率が経済成長率に値する)は、 他の北欧諸国とともに世界一です。そして次にご紹介するのは、政治に汚職の ないことも世界一です。
政治に汚職のないこと世界一
フィンランドは世界で最も汚職の少ない国です。税金は高いがそれだけの恩恵を 受けているということを国民は充分知っているので、不平不満はいわないし、 全ての人が無料で教育を受けることができます。福祉制度も充実し、老後も心配 なく生活ができる国です。政治が汚職と関係ない世界で政治が信頼の中心になっているのです。
環境、水のきれいなこと世界一
政治が環境や水の美しさを守っています。環境ではすべての国民は公私有地を 問わず森の中に入って自然に親しむ権利があり、同時に自然を守る義務があると されています。2002年度世界経済フォーラムの環境維持可能指数で142カ国中 トップにランク。2003年度国連世界水開発レポートでは世界一水がきれいと評価 されました。
NPO世界一
フィンランドでは、市民の5分の4がNPOに参加しており、複数のNPOに所属している 人も多いそうです。増加傾向は過去10年間ますます大きくなっており、社会の進歩 をめざす人々のグループは協会組織を結成し、断酒運動、労働運動、青少年運動、 協同組合運動など、様々な目標の実現をめざす活動を当然のことと考え、自分たちの アイデンティティとして活動しています。最近ではこのような主張を持ち登録された NPO活動の他にスポーツクラブやオートバイクラブやリクレーション活動など新しい 登録されていないNPO活動もめざましい勢いでふえているということです。 この「NPO世界一」というのは、今読んでいるイルッカ・タイバレ編著/山田真知子訳 「フィンランドを世界一に導いた100の社会改革―フィンランドのソーシャル・イノベーション」という本の中のタイトルの一つです。
他の参考図書
“Women in Finland” 1999 otava publishing co. ltd.helsink
” Politics of Gender ~a century of women’s suffrage in Finland”2006 otava publishing co. ltd.helsink
フィンランドの女性労働―2005年度先進国派遣調査報告書
2006 女性と仕事の未来館
2009年はキューバ革命50周年です。2人の指導者の一人カストロは存命ですが、一方の「チェ、ゲバラ」は1967年ボリビアで政府軍に銃殺されました。スティーブン・ソダーバーグ監督の映画『チェ28歳の革命』と『チェ39歳の別れ』を合わせて、約4時間半の長編を一気に観ました。ゲバラを演じたベネチオ・デル・トロは2008年度カンヌ映画祭主演男優賞を受賞。これが2001年のアメリカ映画だったとは「ほんとに?」と思ってしまいます。ブッシュ時代がはじまり、その後の8年間で「テロ撲滅」の名の下にアフガニスタン、イラク戦争が続き、女性問題は封緘され金融バブルの破裂から今の世界的な経済破滅という結果を招きました。この最悪の8年間は上映されなかったのです。キューバといえばケネディ大統領時代の「キューバ危機!」にラジオに耳を引っ付けて聞いていたのを思い出します。ソ連がキューバへ核ミサイルを配備しようとして、アメリカが激怒。ケネディ大統領は海上封鎖を決意しあわや核戦争かといわれた1960年のことです。ジョン・レノンが世界でもっともカッコいい男といったという「ゲバラ」とは、どんな人間
なのだろうという興味本位で映画館に行きましたが、ヒューマニストとしてのチェ、ゲバラ(本名エルネスト・ゲバラ、医師、アルゼンチン人)の人道愛と情熱と卓越した行動力の真髄を充分に描ききれていたと思い
ます。チェ、ゲバラはトレードマークの黒いベレー帽をずっとかぶっていました。映画の後、立ち寄った東京代官山の帽子屋さん(CA4LA http://hatbox.jp/)は、この映画の支援をしているということでした。この帽子屋さん、シックな英国調の構えにもかかわらず、棚の商品は全部ジェンダーフリーでした。紳士もの、婦人ものなんて区別はないのです。大阪の家の近くの商店街で最近つぶれた伝統ある帽子屋さんは、区別していましたね。
今後生き延びられるかどうかの境目はひょっとしたらこんなところにもあるのかなと感じ入りました。
変革の時代へと足を踏み入れた2009年、本気で国を変えようとした「チェ、ゲバラ」が帰ってきたことを実感した映画でした。

「東京會舘フロントの雛飾り」「東京會舘フロントの雛飾り」
上記は09年1月から、大阪市立大学文化交流センター(大阪駅前第2ビル6階)の卒業生でつくる市民講座で実施する人間社会コースのタイトルです。
http://www.osaka-cu.ac.jp/
1月23日(金18時半~20時)はビッグイッシュー日本代表佐野章二氏をお迎えします。30日(金)は「シングルマザーの就業支援から」そして2月6日(金)が「ワーキングプアーとコミュニティカレッジの役割」の講演をします。3回シリーズです。
非正規労働者(パート、派遣、期間工、請負など)は増加し、07年度の派遣労働者数は384万人、前年度比約20%増(労省報告)です。貧困の蔓延です。それもセーフティネットなしの荒波です。年末31日比谷公園で「年越し派遣村」という救援活動がはじまりました。支援を求めて訪れた労働者は500人、炊き出しや相談などのボランティアは200人を越えたといいます。でもこれからです。このように緊急のワーキングプアからのステップアップとして、職業スキルを身につけ、就業の準備をする場として「コミュニティカレッジ」というセーフティネットが有効です。
派遣労働者だけではなく、就業中断の女性や、学卒後職業スキルを持たないままの若年者、企業内のOJTシステムに参加できずに職業スキルを蓄積できていないフリーター、高齢者など眠れる潜在力をもつ人々の再スタートにもコミュニティカレッジが有効です。
お正月、日本経団連の御手洗冨士夫会長は、今年の課題として不況脱出が最重要といい、人材育成への努力を強調しました。日経新聞では「米国に多いコミュニティカレッジは地域で必要な人材を育成している」(1月12日論説委員長
平田育夫)と言っています。「仕事」は生きる意欲につながります。就業準備をし生計維持ができるなら、社会全体の活力は増大し、潜在的な労働力も活性化します。一人あたりの労働時間は短縮、男女の家事分担は進み、ワークシェアリングが可能になる生産性向上が進みます。スキルのない非正規社員を雇用の調整弁に使うのではなく、正規・非正規の枠を越え、社会全体でスキル向上を支援し続ける
仕組みをつくるのです。生涯、学校-職業-学校-職業の循環を繰り返し、いつでも行きつ、戻りつできる人生を誰もが送ることができるようにする仕組みそれが、コミュニティに根を張ったコミュニティカレッジなのです。
(下図は堂山智子作成)
活力あるコミュニティを再生させる再職業教育、就業支援のための社会インフラとしてのコミュニティカレッジ
