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代表 金谷千慧子発言集
時の法令(大蔵省印刷局発行)巻頭「おもいつくままに」連載分
2000年4月から1年間に掲載された文章を順次掲載していきます。

もくじ
「2000年カタリスト賞受賞パーティに招かれて」
「アメリカビジネス界における女性の実情」
「ポジティブ・アクションをすすめるために」
「ヨーロッパのポジティブ・アクション」
「フェミニン・リーダーシップ=男性中心社会で女性が成功する方法=」
「アメリカのNPOと人材育成
 
 
「2000年カタリスト賞受賞パーティに招かれて」

2000年カタリスト賞受賞パーティに招かれて

 今年のカタリスト賞の受賞パーティは、3月21日、ニューヨークのアストリアホテルで行われた。 出席者はフォーテュン500社から選ばれたグローバル企業のCEOたちであり、その数は毎年増え続け 今年は1800名であった。私はカタリストと姉妹提携しながら活動を開始した 「ウィメンズ・イニシアティブ」(2000年2月3日設立:和名「女性の躍進支援」)の代表として 今年の受賞パーティに招かれた。久しぶりに友禅で仕立てたパーティドレスを着た。 今年の受賞企業は、1)チャールズシュワブ社、2)株式会社IBM、3)ノーザントラスト社の3社である。  カタリストはニューヨークに本部をおく非営利団体(NPO)で、企業での女性の昇進を目的に1962年に設立された。 現在職員は52名、うち男性は3名である。カタリストとは「化学変化を起こさせるための触媒」という意味で カタリストも女性の企業での躍進という化学変化を起こさせるためにさまざまな「触媒」活動をしている。 調査研究では、企業内の女性役員の数値、仕事と生活のバランス、フレキシブルワーク、メンタリング 有色女性の企業での躍進のための課題などのテーマがある。 また女性を戦力化するため女性の取締役をつくるコンサルティングやヘッド紹介事業等も行っている。 カタリスト賞の受賞パーティは、これらの活動を最も華やかな形で結実させたものである。 パーティに先立って午前9時15分から4つのセッションが行われ、15の分科会でワークショップがあった。 祝賀会も2つに分かれており、企業のトップたちが合流するのが、7時からのディナーパーティである。 アストリアホテルのホールは2・3階はテラス付きで、とてもはなやいだオペラ座風の囲気だった。 「お久しぶり、その後どう?」といいながら、握手ぜめの人や肩を抱き合っている人たちがあちこちでみられる。 企業のトップレベルの異業種交流の場でもあるようだ。 企業のトップといっても女性と男性の比率は、半数ずつぐらいで、女性の方が少ないという感じではない。 軽やかなざわめきと華やかな服装で心から女性の躍進・登用を成し遂げた企業を祝福しているようだ。  受賞企業には大きな拍手と歓声が起こり、アメリカのとトップビジネス、ジェネラルモータースのCEO ジャック・ウェルチ氏のスピーチが始まった。 一緒のテーブルに、会場で映し出された受賞企業の説明ビデオに 「これは私の会社でつくったビデオなの」と説明する女性社長がいた。 隣のカタリストの職員で日本の「ウィメンズ・イニシアティブ」担当のチェリッシュさん(プログラムコーディネーター) に聞いてみた。「参加者一人あたり10万円でしょ。1800人だったら1億8千万円の収入ですか?」 「そうなんです。カタリストはNPOとして財政的に本当に恵まれています」とニッコリ。 そして「最近婚約したの」と薬指のエンゲージリングを見せてくれた。 たびたび耳にした「財政的に恵まれているNPOカタリスト」の背景をプレジデント・シェーラウェリントンさんは こう語った。「私たちは企業の意向におもねらない正確で容赦ない誠実な調査結果を出すのです。 だから企業は私たちを信用してくれるのです」と。 毅然として真実を語ることの勇気とそれを支える力量の高さ、そして女性への広い愛をその言葉の中にくみ取った。 カタリストも設立当初から権威もあり、財政的にも恵まれているという状態ではなかった。 設立当初の1960年代は、女性の再就職や失業女性のトレーニングなどの支援活動をしていたが 1980代後半から、企業の女性登昇進支援に方向転換したのである。 1986年、「ガラスの天井」という言葉が、「ウオールストリートジャーナル」の特集になった。 企業には見えないガラスの天井があって、女性はいかに努力をしてもトップの座には上がれない という女性たちの怒りと嘆きを特集にしたものだった。 これを機にカタリストもこのガラスの天井を突き破る活動を始め、女性の昇進・登用を進めた企業の表彰を 1987年にスタートした。(時の法令 2000.4.15 No.1615)

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アメリカのビジネス界における女性の実状
−カタリストセンサスより

毎年3月21日に、カタリスト(触媒の意、1962年に設立
企業で働く女性の昇進を促すことを使命に活動する米国の非営利組織)賞の受賞記念ワークショップとディナーがもたれる。
私が今年設立した女性の躍進を応援するウイメンズ・イニシアティブの代表として招待を受けたことは前月号に述べた。
日経新聞4月8日夕刊に、ジャーナリスト香川陽子さんが「女性に開かれた企業表彰」と題してカタリストの活動とカタリスト賞について的確な紹介をされている。
今回は、毎年この日に報告される「アメリカの女性の実状」(カタリストセンサス)をかいつまんで報告したい。
カタリストは企業で働く女性の昇進を促すために、職場の女性に関する調査・研究を行い
女性が昇進するうえでの条件や障害をつきとめ、男女の雇用均等をめざす企業にアドバイスしている。
それらは調査報告書になっているが、ここで紹介するのはそれらをコンパクトにまとめたセンサスからである。
米国では、女性の労働力は全体の46%(日本は43%)である。また管理職・専門職に就いている女性は49%に達している。
また企業の役員クラスでは11.9%であり、取締役では11.2%、企業での高い役職者では5.1%
高額所得者の中での女性は3.3%と報告されている。
フォーチュン500社(フォーチュン社の選ぶベスト500社)のなかでの女性の最高経営責任者(CEO)は3人である。
日米国ともに女性の労働力率はさほど違わないが、米国は、管理職・専門職の女性の比率が男性と肩を並べる数字になっている。
ここが日本の実態と全く違うところである。そして今では、管理職のレベルではなく取締役の増加が課題となっている。
ILOの統計(1997)によると、日本の管理職は8%となっているが、これを課長以上に限定するとわずか3%になってしまう。
日本ではポジティブ・アクション(積極的平等措置)が改正均等法や男女共同参画社会基本法でスタートしたが法制定のねらい通りには進まない状態もある。そんなことをすれば「女性だけ特別視することになり男女平等に反するのではないか」といった、的はずれな後ろ向きの論議もされている。
ポジティブ・アクションとは、一方の性が4割以下のところに一定の時期、積極策を講じて増やすことは、逆差別ではなく平等を積極的に進めることだ、という意である。
米国では1960年代から行政命令でアファーマティブ・アクション(積極的平等措置:ポジティブ・アクションとほぼ同意語)を積み重ねてきた。そしてようやくその努力が実を結び、女性の能力発揮と企業の経済成長がドッキングしたビジネス社会が到来している。しかしまた実力主義とは厳しい社会の到来でもある。
(1) カタリストセンサスに基づく取締役会の女性たち

1) 取締役会の女性はフォーチュン500社では、テ女性が11.2%占めているが、フォーチュン501〜1000社では8.5%に減少する。
2)フォーチュン500社の企業の84%に最低1人の女性取締役がいるが、フォーチュン501〜1000社では1人以上の女性取締役を置いているのは62%にすぎない。
3)フォーチュン1000社のうち女性取締役の占める比率の高い業種は、玩具・スポーツ用品(26.9%)石鹸・化粧品類(20.0%)、金融・貯蓄機関(15.0%)、出版・印刷(14.9%)である。
4)フォーチュン1000社のうち女性取締役の占める比率の低い業種は、半導体(3.6%)、廃棄物処理(4.7%)エネルギー(5.3%)、たばこ(5.4%)となっている。(2) 増加する共働き夫婦、男女ともに「妻が働くことは自分のキャリアに良いことだ」
米国では、共働き夫婦がこの40年間に20.2%増加、共働きはごく普通になった。
女性は結婚してもやめることを原則とはせず、共働きの男性の69%、女性の67%が、経済的必要の有無に関わらず働き続けたいといっている。共働き夫婦は、男女ともに「妻が働くことは自分のキャリアに良い影響を与える」(男性56%、女性65%)という考えが主流になっている。男性の意識も変化してきた。
しかし男女ともに「時間がないこと」が結婚生活の最大の問題といっており、これはわが国においても同じである。
(詳細については、下記に。女性と仕事研究所発行「女性と仕事ジャーナル第8号」特集カタリストまたは、Catalystのホームページ http://www.catalystwomen.org  図表はcopyright Catalyst )

(時の法令 2000.5.15 No.1617)

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ポジティブ・アクションをすすめるために

均等法の改正で、ようやくポジティブ・アクションが陽の目をみるにいたり、平等への礎ができた。
ポジティブ・アクションは、過去における社会的、構造的な差別によって現在不利益を被っている集団(女性や人種的マイノリティ)に対して、一定の範囲で特別な機会を提供することによって実質的な機会均等の実現を目的とする暫定的な特別措置で、積極的差別是正措置という。
欧州では「ポジティブ・アクション」、アメリカやオセアニア大陸では主に「アファーマティブ・アクション」の語を用いることが多いが、北京女性会議では「行動綱領」でポジティブ・アクションの用語が統一的に用いられた。
クオーター制(割当制)も特別措置の一つで、ノルウェイなど北欧では法律的強制を伴って採用している。
世界のポジティブアクションは1965年の国連の人種差別撤廃条約からがスタートであるとしたら1970年代後半、ほとんどのEUをはじめとする欧州・アメリカ・オセアニア各国では法制度化されており遅れること30年、やっとわが国に実現した。
単に不平等を排除するだけではなく、平等を構築、創造する行動の時代になったのである。
とくにアメリカでは女性が主役で、ここ20年、ポジティブ・アクションの下急テンポで社会、経済、政治制度を変貌させてきた。問題意識を持つ多数の女性と理解ある男性が一部のエリートやエグゼクティブにとどまらず、また上からだけではなく下からも両サイドからも、幅広く、広範囲に、且つ尽きないエネルギーと力強い行動力で平等要求を貫き通してきた。
しかし日本の現状はどうであろうか。わが国の管理職全体に占める女性の割合を役職別にみると1.2%、2.4%、7.8%とすべては1割をはるかに満たない。あまりに少ない(平成11年版「働く女性の実状」以下同じ)。
女性の管理職が少ない理由として、「必要な知識や経験、判断力などを有する女性がいない」(51.5%)「勤続年数が短く、役職者になるまでに退職してしまう」(36.9%)といわれている。
このような事態は均等法が制定されてから15年も経たのに遅々として変わらない。
最も問題だと思うのは、女性の登用に当たって、企業は行動をしているかというと「女性の活用状況や活用についての問題点の調査・分析」は「行っていない」が88.6%、「女性活用の計画を策定する」では「行っていない」が89.3%「中間管理職や同僚男性に対し、女性活用の重要性についての啓発を行う」も84.7%は、「行っていない」のである。
本当のところは未だなにも手がつけられていないのである。
改正均等法から1年を経て、さあこれからなのだが、ポジティブアクッションは今一種のバックラッシュのさなかにあるような気がする。
たとえば、よく聞くのは、「女性、女性というのは均等法違反」といって女性に対する施策が従来より後退したり止められたりする、という。
「均等法も女性のみ採用をやめるこのご時世に、何で女性を特別扱いなんだ。もう女性は充分平等ではないか。
女性を冠した講座はもう不要ではないか」など。
ポジティブ・アクションは、男性の管理職や男性の同僚への啓発と女性に実力をつけるこの両方から実施していかねばならない。その実行のスピードアップをはかるためにウィメンズ・イニシャティブ(2000年2月3日設立、アメリカのカタリストの支援を得ているNPO組織、以下WI-Jという)は、つぎのように女性と企業の二方向からの活動を提案している。
まず女性の登用・成功・野心の成就をめざす活動をしていく。
女性に対して、キャリアアップトレーニングやカウンセリング、情報の提供を行い、女性のやる気のアップ所得のアップ、職業スキルの高度化を実現し、役割モデルとしての女性管理職の大幅な増加を促す。
企業に対しては、人材資源の開発調査し、既存の能力をフルに活用し、企業の成長につなげ
企業イメージアップに大きく貢献する。
このように女性のみならず、グローバル化する企業にとっても大きなメリットをもたらすのである。
二方向からのネットワーク活動を多くの志を同じくする人たちと展開する。
WI-Jは、次のような理念を持つ。
「われわれは、21世紀における世界のとの調和の中で、新たなる企業文化を構築し
 経済社会での女性の活躍を目標に、女性の力を信じ
 多様性(diversity)を力に、豊かな人間らしい社会をつくることをめざす」
(時の法令 2000.6.15 No.1619)
 WI-Jも4つの活動(図)

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ヨーロッパのポジティブ・アクション
 EU法廷がパートに年金権を全面的に認めたことに関して

5月16日、ルクセンブルグの欧州裁判所(EU法廷)で、イギリスのパート労働者たちの6年にわたる闘いに
「年金加入制度をイギリスに求める」との判決で勝利した。
これでイギリスの約10万人のパートタイム労働者が1976年にさかのぼって年金に加入できることになった。
この判決は、EU法(「同一価値労働同一賃金命令」1976年)に規定する
「間接差別」の真価をあらためて世界に示すことにもなった
。つまりパートタイマーが年金制度から除外されていたのは、パートの多数が女性であることで差別されているのであり
「間接差別」であり、女性差別」であるとするものである。
1975年以降の世界的なフェミニズムの流れは、当然EUレベルにも大きな影響を与え
EU委員会では、条約以外に、女性の平等のために権限の大きい「命令」を出すようになった。
前述の「同一価値労働同一賃金命令」「社会保障に関する男女平等命令」(1978年)
「職場における社会保障制度の男女平等待遇原則命令」(1986年)等がそれである。
これらのEU命令は、超国家的な存在として各国を拘束するのである。
EUでは2つの方向で女性の平等を実現してきた。一つは前述のEU委員会の「命令」という立法であるが、もう一つが、それを実現するためのポジティブ・アクションである。
法の整備・適用だけでは機会均等は実現しないという認識で「第1次、第2次、第3次男女機会均等のための行動計画」を行ってきた。
たとえばEU域内での情報ネットワークづくり(女性の職業訓練制度の充実ネットワーク、保育形態ネットワークなど)広報活動や意識改革の促進、不遇な女性たちの支援活動などがそれに当たる。
1984年には、「ポジティブアクション政策を促す理事会勧告」、『命令』の完全実施のためのガイド」を出している。
EUのポジティブ・アクションは、アメリカなどのアファーマティブ・アクションや北欧のクオータ制に比べると特に「女性」を入れるというよりも、性別ではなく、最も適切な人を置くという考え方である。
しかしそこには、直接差別も間接差別も許さないという前提条件がある。
それにしても今回のEU判例は、日本のパート女性にとってこそ、大きな励みになるのではなかろうか。
パートの8割近くが女性で、雇用期間つき、年金なし、健康保険なし、ボーナスなし配偶者控除(年収103万円未満)の枠内で働くことが当たり前のような仕組みになっている日本では
どこをどう崩したら均等な待遇が当たり前にかわるのか、悔しさだけが空回りするという現実があるからである。
1997年、国際パートシンポジウム(国際交流基金・女性と仕事研究所共催)で、イギリスから来日したベルナデッテ・ヒロンさん(TUCサービス機関労組全国組織女性委員会議長)は
「パートタイマーは企業にとってパートナーですが、労働組合においてもパートナーです。
 労働組合が仲間としてのパートとぱーとのために闘えるかどうかは、イギリスの労組の試金石なのです。
 女性の未来をつくれるかどうかでもあります。女性こそ未来そのものです。そのことは日本でも同じだと思います」
と締めくくったことを思う出す。ヒロンさん、今回の勝利、おめでとう。
さて、国連特別総会「女性2000年会議」が6月10日に終わった。
189カ国の加盟国と1200のNGOが参加して、21世紀の男女平等の実現に向けて「成果文書」と「政治宣言」を採択した。
そして女性に対する暴力、女性の職業能力開発、クオータ制の導入などを各国に早急に対応すべきだとした。
特別総会議長、ナミビアのテオ・ペン・グルラブ氏は、前回の北京会議(1995年)はコミットメント会議であったが今回は女性の平等とエンパワーメントに向けて決意を新たにする会議だと訴えた。
日本政府の演説では、全会一致で採択された男女共同参画社会基本法の成立(1999年6月)が大きな成果だと報告された。
この法律は、明確に「間接差別」の禁止を規定していないなど不十分なところが多いが、それでも日本で初めての男女平等法であり、今後の期待が大きい。
なかでも第8条の積極的改善措置(ポジティブ・アクション:国連ではクオータ)は女性の平等とエンパワーメントにはきわめて有効な規定である。決意を新たに実施に向かわねばならない。
(時の法令 2000.7.15 No.1621)
*イギリスでは、1995年2月6日の改正で、週16時間以上のパートタイマーは、年金加入 になっていた。週16時間以下の場合には適用されていなかった。

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フェミニン・リーダーシップの今後
=男性中心社会で女性が成功する方法=

1 女性の能力を、生かさない企業も個人も、今後の繁栄は期し難いマリリン・ローデン著/山崎武也訳「フェミニン・リーダーシップ−男性中心社会で女性が成功する方法」
を読んだのは、1987年の出版から10年も経ていたのでした。
著者のマリリン・ローデンはニューヨークを本拠に活躍しているコンサルタントで
女性特有の感受性を充分に利用して、研究、インタビュー、直接観察等をした結果をこの本にまとめられたのです。
そして山崎氏は
「女性の能力を、女性本来の姿に従ってフルに生かしていない場合は、企業も個人も、今後の繁栄は期し難いと断言できる」
(訳者まえがき)と信じて翻訳に踏み切られたのです。
「女性は男性社会に迎合することなく、女性のままで企業のリーダーになっていったらいいのだ」
という考え方を、均等法制定当時に日本に導入しようとされた山崎武也氏の見識の高さに敬服すると同時に
アメリカのビジネス社会が女性の登用・昇進をいかに進めているのかも実感しました。
本書が出版された当時、アメリカの企業で働いている女性は45%を占めていましたが
現在では、管理職の比率が45%になっています(ILO調査)。
日本の場合には、女性の労働力率は1999年で40%ですが、管理職比率では3%でしかないのです。
2000年というミレニアムに、われわれは45%と3%の違いのなかで
21世紀の日本の女性の登用・昇進を展望せざるを得ないことになったのです。
そのとき、本書は私たちのバイブルになると信じています。
ところが、本書は現在絶版の状態で手に入りません。
とても残念なことなので、山崎武也さんに再版販、あるいは、新たに出版していただくことをお願いしている状態です。2 新しい発想で、女性本来の姿を生かす
「女性的(フェミニン)リーダーシップ」という言葉は
1980年代からアメリカのビジネス界で女性の管理職が大幅な増加したことに伴い使われ始めた言葉です。
これは、女性管理職は、性役割としての「女性性」を使うという意味ではなく
従来の男性が中心になっている企業社会での、偏向性をもう少し是正しようという趣旨でいわれています。
男性中心主義の企業は、根底に競争概念があり、絶え間なき競争的闘争で勝者と敗者しか存在せず
最大の目標は勝つこととされます。これは軍隊の価値・目標に極似する。
男性のリーダーシップ方式では、仕事のやり方は「競争的」であり、組織構造は「階層制」、根本目的は「勝利」
問題解決方法は「理性的」「戦略的」「非感情的」「分析的」ということになります。
このような企業世界に女性が管理職として入っても、女性が男性化するにすぎません。
そうではなくアメリカ企業が活性化するには、経営能力や技能の多くを女性から見つけ、会得しなければならないのです。
従来のやり方では、女性はマイナスの影響を被り、女性の管理職は企業の中で創造性が失われていきます。
そこで、新しい発想で、企業組織を活発にしていくために、従来見落としていたことを再検討するのです。
まず企業組織は、女性の採用を増やすことから始めねばなりません。そして業績評価システムを修正します。
たとえば人間関係の才能、効果的なチームワークをとれること
従来の殻を破ったような新しい問題解決アプローチができること
多岐にわたる複数の作業グループを公平かつ効率よく扱っていく能力などを正しく評価するのです。
さらに給料や昇進の不公平をなくすことでも重要です。
「同じ仕事に対しては同じ給与」という断固たる方針が貫かれねばなりません。
そして仕事の出来る女性をトップの地位にまで進ますということが、組織内の女性に最大の励ましになるのです。
男性は、女性と職業上の関係を築きあげる訓練が必要であり、現在の企業組織が大幅に変化することも含まれています。
3 もくじの紹介
現在、入手できない書籍の紹介なので、もくじだけを記載します。
第1部
女性管理職がアメリカのビジネスの成功と成長のためにできることを、新しい観点から探る。
フェミニン(女性的)リーダーシップは、今までの経営管理方式とはどう異なっているのか
生産性はどのように向上するか、従業員のモラールの向上にどう影響するか。
従来の管理的能力といわれてきたものでは女性の才能は生かされない。
感情表現、問題解決の際の直感力とか個人的関わりを重視するリーダーシップの新しい概念の提起。
1 過渡期にあるリーダーシップ/2 企業内の男性中心主義/
2 企業の危機的状況/4フェミニン(女性的)リーダーシップの台頭第2部                                   
権力の行使は従来女性には不得意な分野だといわれてきた。
そこで女性はその能力を確保すべくさまざまな努力を重ねてきたが、これは不要な努力なのではないか。
権力とは「他の人に影響を与え、ものごとを動かし、個人の目標を達する能力」であると定義すると
権力には地位の力と個人の力の両側面がある。男性では地位の力を多く使う傾向があり
女性では、個人の力を多く使い、目的と目標をはっきりさせて、個人にやる気を起こさせ
一生懸命働かせる手法を多くとることができる。
5 権力の行使/6 仕事の基準設定とリスク/7 チームワークと参加式経営/
8 効果的な人間関係/9 コンフリクト・マネージメント /10 直感と問題解決/
11 多様性と複数の役割の管理/12 専門能力の開発 第3部           
リーダーシップの質的変化を遂げるのには、30%という「臨界質量」が存在するといわれてきた。
これを過ぎると、女性の影響やそのリーダーシップ技能が組織の中で目につくようになるということをさす。
しかし、数の増加だけでは有効な効果が発揮できず、男性自身がこの新しいリーダーシップ方式を支持し
組織・経営行動の範囲を定義し直すためことが重要で、男性はすぐできることを実行することが必要である。
13 女性のできること/14 男性のできること/15 組織にできること/16 女性的リーダーリップの将来 
(時の法令 2000.8.15 No.1623)

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アメリカのNPOと人材育成

企業における女性のリーダーシップとNPOでの人材育成は大きな関わりがある。
アメリカの場合、マネージャークラスの女性は49.3%で、男性とほぼ互角になったが
次の課題は、エクゼクティブ(取締役や社長)の数を増やすことである。
ところが従来、企業の意思決定レベルに参加していない女性には、リーダーシップの向上に関わる経験がなく
ロールモデルもない。リーダーシップに適切なモデルは男性だったからである。
「エグゼクティブは女性には向いていない」というステレオタイプな考え方が女性を萎縮させてしまうのである。
それにも関わらず、この十数年間に女性がマネージメント能力やネットワーキング能力をつけていった背景に
アメリカでもカナダでも、NPO、NGOでの女性のめざましい活躍がある。
アメリカでは120万の登録NPOがあるが、NPOは学生だけでなく社会人のインターンシップを最も多く受け入れる。
ここで、組織のマネージメント、資金集め、プログラム運営、広報、会計管理、インターネット
資料ライブラリー等の職務の技能収得や経験を身につけられる。
スタッフだけでなく経営責任者である理事のトレーニングプログラムもある。
それらを収得し、NPOでの多角的な活動を展開し、その後企業でのエグゼクティブマネージャーに迎えられるケースも多い。
人の流れは官と民・第3セクターとしてのNPO、NGO間で横断的につながっている。
NPOだからといって給料が低いということもないし、インターンシップの給料でも生活はできる。
NPOの担い手は女性が圧倒的に多く、女性たちはここで組織運営スキルやリーダーシップをトレーニングされ
次のステップとして、企業や政府でのリーダーに成長していったのである。
その国の女性のリーダーが各分野にどれだけ多いかの測定値は
NPOの活動がどれほど充実しているかで測れるといわれるぐらい、NPOは多くの女性リーダーを育成した。
1962年設立したカタリストは、設立当時は女性の失業者や再就職の支援をしていたが
現在では、企業で取締役・社長の女性比率を高めるため企業へコンサルやトレーニングをしており
理事のメンバーはフォーチュン500社に入っている280社である。
この度、私たちはここにインターンシップの受け入れを依頼し、ニューヨークに来た。
「ウイメンズイニシャティブ(女性の躍進支援)」の活動基盤をどうつくるか
カタリストの活動の歴史的な経過と重ねながら各担当分野からレクチャーを受けている。
プレジデントのシーラ・ウエリントンさん(62歳)は、イエール大学の副学長を勤めるかたわら
政府のグラスシーリング委員会の委員をするなど、さまざまなセクターで活躍している女性である。
2000年1月、日本に招聘する予定である。NPOのカタリストは
6億円の年間予算で、専門職員65人(インターン、男性5人を含んで)がフル稼働している。
今年中には、西海岸、ロスアンジェルスにブランチを造るそうで、有能な人材はまだまだ必要だと担当者はいっていた。
インターンの数も増やしており、グローバル時代に対応して黒人やアジア系のインターンが増えている。
私たちのスケジュール管理や世話をしてくれたのもインターンで、タヨさんという23歳の黒人の女性と
アンドリュウという17歳のハイスクールの青年であった。
彼はカタリストの職員をしている母親のすすめでここにきている。
タヨさんはプリンストン大学を卒業して現在フルタイムのインターン生で、時間給あたりで12ドルで働いている。
タヨさんはカタリストが3年がかりで実施している「カラードの女性の企業での地位」調査にかかわり
自分の社会学の研究とも興味が重なり、インターンシップを決心したという。
このようなインターン生の数年後の開花が楽しみである。
アメリカのNPOで高度な人材育成が可能な原因として、2つのことがいえると思う。
1つはアメリカでは、学生も含めて自らのキャリア設計と経歴を積み上げることに人生の意義を求める傾向が高く
いうなら日本ほど安定雇用に意味を求めないということがある。
自分の人生設計のなかに、いっときNPOでやりたいことをやって力をつけることの意義が大きいのである。
2つ目に、あらゆる組織で「平等」ビジョンが基本になっているということである。
NGO、NPO組織においても、才能や能力を自由に発揮することで
すべての人がその組織でのびのびと幸福を追求できる環境をつくることが最も重要だという原則がある。
具体的には、性や人種にとらわれない、職務に対応した能力評価と賃金システムの確立が当然という前提があることである。
多様な人種の混在する国では、明確なビジョンが示されなければ(たとえそれがビジョンだけであろうと)
共存できないということなのだろう。「平等」「自由」そして「幸福追求権」
といったアメリカ独立宣言以来の政治的ビジョンが何度も繰り返され
公民権法(1964年)や歴代の大統領演説にさえ、クリアにうたわれている。
それに苦しんできた国だからこそ、明確に何度もうたっているのだろう。
半年ぶりのニューヨーク、街はさらに清潔で美しくなり、世界中からの観光客であふれている。
彫刻を施された牛があちこちに出現していてびっくりした。おみやげものまで自由の女神と牛・牛である。
今年4月にカウパレードという催しがあり、それ以来なのだそうだ。ブロードウエイのチケット売場は
少し前は日本のコマーシャルがあふれていたが、今では、カップヌードルとウイスキーが一つずつだけである。
それにすべての広告には、ホームページのアドレスが大きくでている。
元気なニューヨーク、ニューヨークは世界と呼吸しているという実感がある。
(時の法令 2000.9.15 No.1625)

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